地域マスター工務店登録運動 Webコラム

住宅道具・考29
床を掘る その9 竪穴住居設計論
山口 昌伴

なぜ、根伐底を生活面にしたのか
 縄文時代は竪穴住居でした―そげんなこと小学生やあるまいし「大人はカンケーない話」だろう。住宅設計者だって大人だからカンケーない。でも私、床を掘るのテーマを掲げた手前、義理でも竪穴住居に触れなければ縄文・弥生の人たちに申し訳がたたん。義理の一文におつきあい願いたい。
 地面を掘りくぼめて地表面まで草屋根を葺きおろす。そういうアイデアはヨーロッパで旧石器時代に始まり、中国・殷の時代の住居では深さ60cm、朝鮮と日本では深さ50cmほどと、ちょっと浅め。
 なぜ地面を掘りくぼめて根伐底を生活面にしたのかはハッキリいって判らない。考古学者は地平面下は深く掘り下げるほど気温が定常になるから、防寒のためだろうといっているが、住宅設計者から見れば、そんならなんで時代が下ると高床になるんだ、と反論したくなる。
 弥生時代の登呂遺跡では土を高く盛ってから掘りくぼめている。平土間に藁を敷いた土坐住まいは東北地方には近世末まで残った。気温の恒常性を求めて掘り下げるのなら50cmやそこらではだめで、2~3mは掘り下げたい。そんなに掘り下げたって、面積を広くとれば平地と同じになって保温効果がない。

竪穴ではなく「浅盆住居」と呼ぶべきではないか
 そもそも縄文の竪穴は直径5~6m、30平米くらいだったから、これを1/20に縮小すると、25~30cmのお盆に2.5mmほど縁(へり)が立ち上がってる状態。だから保温効果は望めないことは明らか。第一にそんな浅いお盆状態を竪穴と称すること自体がおかしい。浅盆住居とでも呼ぶべきであった。
 ではなぜ50cmほど掘ったのか。別の説明を考えた人もいる。原始住居は壁を立ち上げる技術がなかったので、草屋根を地べたまで葺きおろしたが、そうすると草屋根が地べたに接するところは屋根の勾配があるので、隅に坐ると頭がつかえる。それで建築面積の有効化を図るために地べたを切り下げたんだ、という説。
 そりゃあちょいと近代的感覚すぎないか。活動面積が必要なら坐りにくい隅っこ分だけ屋根をひとまわり大きくしようと考えるのが順序だろう。
 かくして地べたを浅く掘り下げた浅盆住居の設計主旨は不明だが、各地に復元されている「竪穴住居」に入って壁際に坐ってみると、無限に厚い土壁の背当たりはじつに気持ちが落ち着く。そして草屋根の裾(すそ)と根伐端の間に残るわずかな平面に肘をあげて休めると、たいへん楽はラクである―ただし縄文人も竪穴住居の断面設計をそんなふうに評価したかどうかは不明である。


道具学会 
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by ju-takukoubou | 2009-04-10 10:24 | 住宅道具・考 
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