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「理科的に考える」ということ
前回には「家づくりは理科と感性が入り混じったもの」と書いた。 ここでの理科とは「自然科学的な論理性」というような意味を指す。何も数式や数値を扱うだけが理科じゃない。 私はシックハウス問題を契機に住宅分野に首を突っ込むようになったが、この問題に出会ったとき、解決に向かうには次のような課題があるように思った。 ・どれくらいの化学物質の汚染度のときに、どんな健康障害があるのかを明らかにする ・どんな建材を、どれくらい、どこに使い、どれくらいの換気を行えば、どのような汚染度になるのかを明らかにする この2つの課題が解決されれば、あとは「どこまでの健康障害を許すか」という社会的な判断をもって、シックハウス問題は解決されるだろうと考えたわけだ。 こんなふうな発想が「理科的発想」ということ。こうやって書けば至極あたり前の発想なんだけど、残念ながら「これがシックハウスの解決のための基本だ」と理解した建築実務者は極めて少なかった。 ほとんどの人は「だからやっぱり新建材はダメなんだ。自然素材というホンモノを使う家づくりがホンモノだ」という発想に向かってしまった。これでは「建築基準法の改正は換気設備メーカーの差しがねだろう」というような、相手にされない批判で終わってしまったのも無理はない。 お客さんとのシンクロ だから理科的な発想をしろ、というのは簡単だが、話はそれほど単純ではない。 平均的なお客さんの理科的素養と建築実務者の理科的素養がおそらくあまり変わらないからだ。 たとえばマイナスイオン。まだこの効用を信じている人も多いだろうが、理科的にはこの実態さえよくわかっていないというか、相当にアヤシイというのが結論的だ。 でもお客さんとつくり手との理科的素養が同じ程度であれば、「この家はマイナスイオンが一杯です」という話で盛り上がってしまう。こうして盛り上がれば「いいことをしてるわけだし、お客さんにも受けがいいからすべてOK」となる。お互いにちょい齧りの「気持ちのよい話」が営業トークのネタとしては最適なわけだ。 理科的発想や理科的素養などは邪魔になるだけ。きっと理屈が嫌いな社長さんは、理屈をこねる社員に向かって「理屈だけで家は建たない。理屈だけで家は売れない」と怒っているはずだ。これは確かに間違いじゃないけれど、でもやっぱり私は家づくりには「理科」がとても大事だと思っている。 このへんの話は次回に。 野池 政宏 住まいと環境社
by ju-takukoubou
| 2009-04-08 17:01
| 野池主義でいく
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