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住宅道具・考33
「道具だて」の設計術 その3 
建具は建てる道具

山口 昌伴

がらんどうだった日本の住まい
 弥次さん喜多さん時代の引っ越し風景では、大八車にたたみも障子も襖も積んでいた(前回参照)。では、そのと引っ越し荷物を積み出した、もとの住まいに立ち戻ってみよう。もと居た家は、屋根と柱とごく一部の塗り壁と、床の敷居や大引きに荒板(たたみの下の板)だけのがらんどう。引っ越していく先もまったく同様のがらんどうであるに違いない。
 襖は視線をさえぎる可動の障壁、明かり障子は陽光を濾過して部屋を明るくする可動の障壁。床はもともと坐臥の道具だったたたみ、壁は大半が可動の紙の壁=襖。天井は弥次喜多ごとき身分には過ぎた具(そな)えだったが、これも稲子と呼ぶ挟み押さえ具で、反りを止めてあるだけだから、搬ぼうとすれば外して搬べる。
 大八車には箪笥長持、火鉢、長火鉢から台所の水甕までが積まれている。それとたたみに障子・襖も積んである。これも家財道具のうち、だから引っ越したあとは「がらんどう」だと言った。
 そこでこんな問いがわきあがる。和の住まいにとって住宅設計とはどういうことか。なんせ引っ越していったあとは「がらんどう」なのだから、がらんどうは設計の対象にはなりえない。

和の住まいの極意
 暮らしの場を支えるのは壁(建具)や床(たたみ)も含めた「道具だて」とその配置(しつらえ方)によって暮らしの場の居心地は設定(設計)されるわけである。
 いまどきの住宅設計は「間どり」が決めてとなっているが、実はそれは間どりではなく「部屋どり」にすぎない。もっと言えば「仕切り壁どり」であり、扉と窓をつければ設計は終わり、とされている。だが、それだけでは暮らしの支え、生活行動の仕方は設定(設計)されていない。
 和の住まいでは、壁仕切りを極力さけている。建具を建てつけるかひき分けるかで空間の広さやつながりは大きく変わる。この変化を組みこんだ壁の道具化―動具化―動ける壁の設定こそ、間どり―自在に間をとるという設定(設計)の極意だった。
 間どり、とはどういうことか。ひとつには空間どりがある。空間とは空と空の間(ま、あいだ、まあい)のとり方である。具体的には柱と柱、壁と壁の間(あいだ)どり、そこに柱と長火鉢の間(あいだ)どりも効いてくる。間どりのもうひとつは時間どり。時と時の間のとり方である。これにも道具の時間(道具を使う目的の起きる時と場、道具を操(あやつ)る時間と手間)が深く関係している。そしてもうひとつ、人間の間どり。人間とは人の間と書かれている。人と人の間(ま、あいだ、まあい)どり。これで空間どりと時間どり、そしてそれぞれに対応する道具どりが効いてくる。住まいの設計、暮らしの場を支える仕掛けの設定(設計)とは、空間システム(空間どり)・時間システム(時の間どり)・人間システム(人と人との間どり)を道具システム(道具だてとその配置=道具どり)によって統合したひとつのシステム(生活システム、暮らし方)を構築していくこと、なのである。そういう設計、あなた、やってますか?

乞う、ご期待!
ちょっと昔の和の住まい―その設計術:決め手は「道具だて」だった
(山口昌伴著『ちょっと昔の道具から見なおす住まいの設計術』王国社、近刊)

道具学会 
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# by ju-takukoubou | 2009-04-10 10:32 | 住宅道具・考