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住宅道具・考32
「道具だて」の設計術 その2 
畳は道具である

山口 昌伴

たたみの変遷
 私たちは、たたみといえば部屋ごとに敷き詰めた「敷き詰めたたみ」体験者がほとんどだから、たたみといえば床材の一種と思いがち。だが、もともとたたみは置き敷きで用いられていた。平安時代の貴族の寝殿造りの御殿住まいをモデルとしている雛祭りの最上段、御殿では男雛・女雛が別々の厚だたみの上に坐している。
 「たたみ」の語源は、起居の坐として敷物を高貴なお方にすすめるには薄い敷物では失礼と、幾枚も綴り重ねたものを供した。この綴り重ねることを「たたむ」と言い、これが名詞に転じて「たたみ」となったのである。だから、たたみはたたみ合わせて厚さを競う、家具の一種としての坐臥具、つまりは道具だったのである。
 室町時代の書院造りの武家屋敷では追い敷き(敷き継ぎ)からだんだん敷き詰めだたみが主流となり、江戸時代に入ると庄屋などの邸宅も奥座敷はこれに倣うようになった。
 明治に入ると武家の格式を受け継いだ官員の住宅をモデルとして、役職つきの勤め人の家屋敷に敷き詰めだたみは広まり、大正時代には都市住居では平民の借家も敷き詰めだたみが普通になっていく。

床材と化したたたみ
 農山村の民家では近代になってもたたみは高価で貴重なものだったから、特別の客寄せのときには敷き詰めても、普段は架台の上に積み重ねておいた。都会では敷き詰めがどんどん普及していったが、それでもたたみには可動な坐臥としての道具のイメージが残っていた。その道具感覚は、春・秋の大掃除にはたたみを揚げて戸外へ搬び出して、陽にあててパンパンパパンと叩いて埃(ほこり)を叩き出す、といった風習に根強くあらわれていた。いまやそうしたたたみの道具性は、見失われ、敷きっ放なしの床材の一種に変わってしまっている。

たたみは家財道具だった
 ところで、私はちょっと昔の引っ越し風景の絵図を目にして、改めてたたみの道具性に気づきなおしたことがある。その引っ越し風景、ちょっと昔と言ったが江戸後期、丁度東海道中膝栗毛で弥次さん喜多さんが活躍していた「和の住まい」の最後に近い頃の引っ越しだった。大八車に家財道具を積み上げての引っ越しなのだが、その台の一番下にはたたみが何枚も積み重ねられていた。たたみも引っ越し先に搬んでいくのかぁ。そう、たたみも床材ではなくて、家財道具のひとつだったからこそ、引っ越し荷物の一員として積まれていたのである。
 その大八車には、障子や襖も積まれていた。建具も道具のうちだったのかぁ。
 次回は建具を道具として見なおしてみよう。

乞う、ご期待!
ちょっと昔の和の住まい―その設計術:決め手は「道具だて」だった
(山口昌伴著『ちょっと昔の道具から見なおす住まいの設計術』王国社、近刊)

道具学会 
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by ju-takukoubou | 2009-04-10 10:31 | 住宅道具・考 
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