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住宅道具・考28
床を掘る その8 
エチオピア 母なる大地の子宮

山口 昌伴

悠然とした「時」が流れる地
 エジプト古文明を育んだナイル河の源流は、遥かなる南方はエチオピアのタナ湖に発する。カイロのエジプト考古学博物館に魅了されて通いつめていた私は、その文明の源流を求めてエチオピアを訪ねてみなければ済まなくなって、カイロからエチオピアの首都アジスアベバへと飛んだ。
 この地にはやはり、エジプトも敵わぬほどに悠然とした「時」が流れていた。それはたとえば山の上の住居にうかがえた。それは直径3cmほどの潅木の幹や枝で四つ目垣ほどの目の粗い籠を組んで粘土で堅めた円筒を壁に、木と草で傘状の屋根を編んでかぶせた家。何万年の昔からの様式の家を、今も建てている。この悠久の時間どりに、私はすっかり参ってしまった。
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▲私が四つ目垣のような籠か笊に土をからめて円筒にした、と書いた「壁」の様子。

エチオピアの奥の深さ
 そんな「世に遅れた」国柄なのに、現代世界に押しも押されぬ超一流ブランド製品があるところがエチオピアの奥の深さといってよい。そのブランド品って何? エチオピアコーヒーである。
 私はとある町の近郊の、名にしおうエチオピアコーヒーのプランテーション(コーヒー園)のつづく街道を歩いていた。低めのコーヒー樹の葉波の向こうにとんがり屋根を見つけて、コーヒー樹林を通り抜けて近づいてみた。はたしてコーヒー園労働者家族の集落で、家々は日本流にいえばプレ縄紋スタイルの超古典様式。先述した籠笊筒傘屋根式超古典住居である。中へ入ってみると家具も棚もなくて衣類はみなロープに引っ掛け収納、働いて戻ってきたら食って寝るだけのシンプルライフ。どの小屋に入っても同じでフィールドノートは空白が埋まらない。

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▲中へ入ると家具調度はなんにもなくて、着物はみんな引っ掛け・ぶらさげ収納。着物は仕舞いこむと湿けたり虫が喰ったりするし、探すのも面倒。日本でも、もとはぶらさげ収納だった。

ニワに謎の穴が
 あきらめて小広い作業ニワに出たら不意に穴があって落ち込むところだった。穴は人の身がすり抜けるほどで底は深そう。住民に訊ねると中は壷状に広がり、牛革の袋で内張りをして穀物を貯蔵しておく冷暗所だという。
 地上に建物を造るのは簡素の限りを尽くしても、やはりなかなか手間もかかり工夫もいり、それでもなお危うげで永保ちはしない。較べれば土中を掘り拡げたら頑丈なうえ内部気候も完璧。まさに母なる大地の胎蔵する子宮といってよい。それにしては穴は掘りっ放しの不定形という無造作なつくりで、転落の危険防止にはありあわせの曲りくねった木の幹が1本、穴をまたいでころがしてあるだけ。
 何万年もこんな調子でやってきたのかキミたちは、と私は笑ったが、カシコイ奴隷・イソップの子孫たちはニコリともしなかった。
 詳しくは、道具学会エチオピア予備探検『季刊道具学13号・比較道具文化探検報告集』参照。
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▲地下の穀物収納穴。上家は風雨に脆弱だが、母なる大地の胎内は気候も恒常で永保ちする。

道具学会 
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by ju-takukoubou | 2009-04-10 10:23 | 住宅道具・考 
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