地域マスター工務店登録運動 Webコラム

カテゴリ
全体
住まいづくりをチェック
いい工務店との家づくり 
業界コトバの散歩 
工務店ブログ探訪
住宅道具・考 
辣腕記者のヒント
野池主義でいく 
工務店業界サーチ
住まいを歩く 
工務店設計者の日々
NARB of JAPAN 
住宅ローン審査の仕組み
リンク
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
住宅道具・考23
床を掘る その3 岩手の踏込炉
山口 昌伴

堀囲炉裏が炬燵に
 岩手県の山んなかに茅葺きの古民家を見つけて訪ねてみる。土間(にわ)から広い板の間にあがる上り框(がまち)のきわの床上に炬燵(こたつ)がある。大ぶりの炬燵櫓(やぐら)にゆったり蒲団(ふとん)が掛けてあって、お婆さんがひとり、いちんちじゅう居たきりのよう。
 その炬燵、間口は3尺(90cm)、奥行きは5尺(1.5m)もある。その長辺が上り框から直角に奥へ向かっている。その上り框側の間口3尺は上り框が凸字に奥へ廻っている。板の間の端の炬燵は掘炬燵になっているのだ。そして掘炬燵の床面は土間とつながっており、底には灰が積もっていた。
 これはもともと土間から板の間に切り込む形に設けた地火炉(地べたに設けられた囲炉裏)だったのだ。土間側からはしゃがんで火にあたれる。床上からは板の間に切り込んだ地火炉に、切り込み端(ばた)に腰掛けて火にあたれる。
 なあるほど、これは秋田で見た土間のまん中の掘囲炉裏(前回参照)を、板の間の端にもち込んだ形なんだ。

「踏込炉」と命名
 岩手山中の冬は寒冷地獄。それでも冬場にも野良へ出ていく用があったり、下屋や納戸で仕事がある。戸外の仕事は寒(さぶ)うて仕事がつづかん。土間に居ても指が凍えてならん。身体、手、足、手指がこわばってくると母屋に飛び込んだ。そして地火炉の火で地下足袋を焼き、骨の髄を熔かすのであった。
 この、土間つづきのオープンな火の具(そな)えを私は、土足のまま踏み込んで煖をとるので「踏込炉」と名づけた。この「踏込炉」は岩手県から東北地方一帯に広く分布していた。
 さて、一人居つづけのお婆さんに戻ろう。冬の戸外や土間での活動を助けた地火炉だった踏込炉は、寒(さぶ)う、さぶう、さぶう、と戸外から飛び込んで火にあたっていたお爺さんも逝って、若い者は都会へ逃げていってしまい、誰あれも飛び込んでこなくなったんで、板の間にコの字に入り込んでいる腰掛け端(ばた)の四隅に脚をたて、板をのせた。そしたらたちまち踏込炉が掘炬燵になった。夏休みになると、都会に行った息子や娘の子たち―お婆さんには孫たちが、故郷の家を民宿がわりにドッとやってくるので、普段は大きすぎる掘炬燵のサイズがちょうどよくなる。

道具学会 
[PR]
by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:59 | 住宅道具・考 
<< 住宅道具・考24 住宅道具・考22 >>