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住宅道具・考⑳
世界一周畳の旅 その15 
日本にもあった尻突き小椅子

山口 昌伴

中国は雲南省の竹楼の拉(ひし)ぎ竹フローリング=竹をたたんだ竹たたみの床坐ライフに日本の丸チャブ様(よう)食卓と、トルコ帽を伏せたような、しゃがみ姿勢で楽ちんな「尻突き椅子」を見つけた。

尻突き椅子に2種類あり
 今どきの日本では畳に坐るのも、床坐から立働に移るのも辛くなっている。日本ではこんな楽ちんな尻突き椅子(筆者命名・前回参照)がなぜ発展しなかったのか。
 じつは日本にも、しゃがんだ姿勢を永もちさせるために、下からお尻をちょっと支える尻突き椅子が2種類あった。
 ひとつは土間の竈前で、じっとしゃがんでいなければならないお尻をちょっと支える、藁を束ねて縄で巻き固めたもの。直径8寸(24cm)、座面高さ7寸(21cm)ほど。1年もたたずに汚れたり傷んでくが、そんなもの竈にくべて新米の季節に新調したらいい。
 もうひとつは風呂場の木製だった小椅子。坐面は8寸(24cm)×4寸5分(13.5cm)ほど。その下にハの字に板脚が斜めの蟻仕口で付けてあって、脚が開かないように下方に角材を渡して板脚の両外側に込み栓を打ってある。そのサイズといい、板造りの合理性といい、シンプルなデザインといい、非の打ちどころのない「完成された坐具」である。
 風呂場で身体を洗うのに尻を突くのにこよなく便利。これがなくてはしゃがみだったら身体がよろけるし、脚を洗うのに床に尻をおとさねばならない。立って洗えばシャボンの泡が湯槽(ゆぶね)に浮いたりしていけない。
 銭湯では、これを1人1脚ずつ用意、なんかしてくれないから、湯を汲む桶を伏せて尻を突いた。木桶がプラスチックに変わると体重でめげるので、桶状の形から三脚を刳り残した三脚スツールが作られた。尻を突く面のまん中に丸い穴をあけて少し凹んで水が切れるようにしてある。
 木製の尻突き小椅子が作られなくなり、作られても高級なので、銭湯用のプラスチック尻突きスツールが家庭の御風呂にも入ってきている。
 今は見かけなくなった完璧デザインの尻突き小椅子にそっくりの構造のものが、実は弥生時代の登呂遺跡から出土している。竪穴式住居以来の土坐住まいはずいぶん続いたが、土間に藁座が残ったが、木製ハの字板脚の方は風呂場に残っただけで、尻突き椅子は高床の居室の方には上がってこなかった。

なぜ尻突き椅子は床上で育たなかったか
 どうも日本の高床の上では、平安時代の寝殿造りの板の間に敷いた敷物(茵(しとね)の類)が厚いほど身分の高さを表すことになって、厚さを競う置き敷き畳となり、室町時代にはたくさんの客人をもてなす書院で敷き詰め畳の上に座っていただく風習となり、書院造りは武家の舘(やかた)だから、武士は畳の上に座り、殿は胡坐、家来は正座―しゃがんで尻を支える、なんてことは許されないのが伝統となって、明治末から大正時代に庄民にも広まって敷き詰め畳の上でも、武家モデルが伝統的格式となった。そこで尻突き椅子は不浄の土間や住まいのはしっこの湯殿には残ったが、屋家の方には出る幕がなかった、というのが私の見解である。
 床坐ぐらしの完璧さを楽しむには、よそ行きスタイルの武家モデルなんかうっちゃって、少し高さのある尻突き坐具を用いたらどうか。じつは私、自然とそうしている。床坐がしんどくなると、K辞苑が手頃なので、これに尻を突いていたりするのである。


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by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:55 | 住宅道具・考 
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