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住宅道具・考⑮
世界一周畳の旅 
The椅子 この始末に終えない家具

山口 昌伴

◆座椅子は? いりません
 私は筆耕(原稿書き)の仕事が溜まりすぎると和式の温泉旅館にたて籠もる。座卓の下の畳にも仕事が広げられるからである。
 で、座敷に通されると座卓まわりに座蒲団は出してある。仲居さんが「あ、ザイスが出ていませんね、お使いでしょ」と取りに行こうとする。「いりません」。
 座椅子の座面に座蒲団のせて書き物をしていると、座椅子の背がなんだか後ろへさがっていく。ひと息入れるのに凭(もた)れるのがよくないらしく、だんだん遠のいていく。でも、凭れなくちゃ、意味ないよなァ。座椅子が凭れたらいけないものなら、座蒲団の下に板を敷いてる意味がない。座蒲団下に板を入れているのは、自分の体重によって座椅子の背が立っていられるようにするため、である。だが考えてみると、凭れるときは背板の上方に力がかかるので、ベクトルの方向(力の方向と大きさの違う力を合わせた力の方向)が背より外側に向くので、背の上方に凭れれば原理的に背が敷板ごと後退することになるのである。
 いきおい身体は座卓を離れまいとしがみつく。座蒲団は尻との摩擦力で居残りたがる。後退したがる座椅子と、残りたがる座蒲団が生き別れになる。旅館や料亭ではその生き別れを目にしているので、座蒲団に紐を縫いつけて座椅子に縛り止めたりする。それに力がかかって座蒲団の皮の方が負けて破れたりしている。そこでゴム紐で緊くつなぎ止めているのがある。これではお尻をちょっと上げたら座蒲団が後退しつつある座椅子の方へ寄って、尻をおろしたら座蒲団のはじっこだったり、座蒲団が無かったり。

◆殿(との)、御座椅子は如何(いかが)!
 昔の殿様は、お座蒲は用いなかった。そして、脇息(肘(ひじ)掛け)は用いたが、座椅子は用いなかった。武士は威厳・体面を保つために姿勢をシャンとしていなければならなかった。お客に行った客人もしかりであった。主婦もシャンとしていたし、お婆さんも背中は丸くなってもしゃんと座っていた。
 座椅子の発明はもっとくつろいで下さいまし、といういたわりの心からであろうし、それが旅館などではサービスの表現にもなってきたのだろうが、私はくつろげない。そんな邪魔くさいもんいらん、というのが本音で、折角のサービスの申し出を私は「いりません」とすげない。

◆坐る文化の国・ニッポンで
 畳に床坐(ゆかざ)する訓練が遠のいて、日本人はおしなべて床(ゆか)に坐るのが下手になってすぐ足が痺(しび)れる。脚腰も弱くなって立ち上がるのが下手になった。もうひとつ、座蒲団が、投げるとポンポコと跳ねるような落ち着かない代物になってしまったのも痺れやすい原因である。The椅子はそれらを救うには役に立ってない。いや、凭れることを拒否して後づさりするんだから、何の役にも立っていない。坐る文化の国だったニッポン、つまらん家具をつくり出したものである。


道具学会 
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by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:48 | 住宅道具・考 
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