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住宅道具・考⑭
世界一周畳の旅 
起居様式の和洋折衷 内モンゴル

山口 昌伴

道具学会比較道具文化探検:内モンゴルの旅での大発見、である。

◆広い土間で椅子・テーブルぐらし
 半砂漠に半(なか)ば定住しつつある地帯で定住型の民家を訪ねてみた。冬は極寒なので住まいは厚い壁で囲って窓は小さい。その屋根は弓なりの肋骨状に架けた細い木の上を草で葺いて土をのせたドーム状で、テント住まい(パオ)を想わせる。庭から屋内に入ると左右に分かれるつきあたりは台所。土間のつづきの右側は個室が仕切られており、左側は広間になっている。広間も土間で、土足で椅子・テーブルを用いる洋風の起居様式。洋風は西欧風の意だが、西欧へ、日本からは大洋を越えていくので西洋風、洋風といっているが、中国やモンゴルからは陸つづきで西へ行けばよいのだから、あちら式は中国では西式と言っている。日本でいう洋服は中国では西服というが如し。
 だから土足に椅子・テーブルの起居様式は、標題に洋式と掲げたが西式というべきだろう。

◆高床式床煖房・(かん)
 さてその広間だが、西式土間の奥に一段上がった奥ゆき一間(二米)ほどの平場がある。日本でいえば土間から上り框を上ったところの板の間にあたる、一段上がり(高床)の平面がある。
 じつはその高床の床下をまん中の台所の竃の排煙を通して他方から屋外へ放出する高床式床煖房「かん」になっているのである。床煖房といえば朝鮮半島の温突(オンドル)が想い浮かぶが、温突は地盤面からせいぜい30cm上りの低い床で、台所の竃の排煙を通すために台所(釜屋=プオク)の床面を地盤面より60cmほど掘り下げている。「かん」では台所を下げずに床を高くしているので、排煙を床下に通して排熱利用をするには高床にしなければならないのである。「かん」は中国東北部から中国北辺部、モンゴル南部から青海省にまで分布している。
 もう一度、土間の広間を想定しなおしてほしい。土間では西式の椅子・テーブルで起居している。その奥の高床の上では日本の和式住居と同じ床坐式の起居様式で暮らしている。「かん」の上面には坐卓が置かれ、書きものをしたり食事をとったりしている。その坐卓は(脚を折り畳むか否かは別とすれば)どう見ても日本の卓袱台である。なァんだ、大正時代に創出され、一大ブームを呼んだ大正モダン家具・卓袱台の元祖型はここに、とっくの昔からあったのかァ。就寝するときは、極寒期にはとくに、「かん」の上でなければ凍死してしまう。当然ベッドなぞは置かず、高床の上へ蒲団を敷いて寝る。

◆見事な和西折衷
 朝が来たら、寝床を出て、土間に降りて洋式、いや西式の生活が始まる。「かん」の上の高床・床坐・床寝の場所とを合わせ見ると――全体が広い一室なので当然一望できる――これは見事な和洋、いや和西折衷である。
 そしてその「かん」の上、高床には「たためるたたみ」うすべりや敷物が敷かれている。日本のような厚い畳床(どこ)にしたら折角の「かん」の暖か味、その有難味を削ぐので、薄手の「たためるたたみ」の方がいい。
 日本では「住まいは夏を旨とすべし」だったから湿気を吸い、吐く厚い床の「たためん(たためない)たたみ」と相成ったのであるなァ。この見事な和西折衷を見つめるうち、そこまで読めてしまったことであった。


道具学会  
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by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:48 | 住宅道具・考 
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