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住宅道具・考⑩
世界一周畳の旅 その7 
魔法の絨毯 モロッコ・ヴァージョン

山口 昌伴

◆「砂の海」に溺れそうに
 道具学会モロッコ探検で、初めて本格的な砂漠の端っこにたどりついた。広大なサハラ砂漠の、ほんの端っこ、モロッコ領内のアルジェリアとの国境近くのメルズーカ砂丘の波打つ畝(うね)りのひと畝(うね)に登ったのである。
 砂漠は砂の海といわれ、駱駝は砂の海をわたる舟、オアシスは絶海の孤島に譬(たと)えられる。その砂の海の最初の波の畝(うね)に登ろうとしたら、堆積している砂が新雪のようにふかふかと柔らかく、靴履きなのに脛(すね)まで沈んで足をとられ、砂の海に危うく溺れるところであった。
 砂の大畝の頂(いただき)から遥かなるサハラの果てに昇る日の出を待ったのだが、同行のベルベル人(原住民の後裔)が巻いて担いできた二畳ほどの絨毯(じゅうたん)を、ふかふかの砂の上に広げてくれた。じかに砂に尻を突いたらまた溺(おぼ)れる。絨毯の上なら尻があまり沈まない。なぁるほど。
 そのうえ体重をかけて尻をもじもじすると、絨毯の面に窪(くぼ)みができて、尻が落ち着く。これは具合がいいもんだ、と感心する。足の踵(かかと)のところをぐいぐい押し凹ませると、尻と踵の三点支持(サポート)、背をしゃんと伸ばして日の出を拝む姿勢がとれる。絨毯から外れたところはふかふかの砂地だから、ワインの瓶をグリッと押せばシャンと立つ。

◆空飛ぶ絨毯体験
 たためるたたみに出逢ったのはネパールだったが、あそこでは平たい床に敷いていた。それでも畳は元々たためるたたみだったんだと感動したが、砂漠の砂の上に敷いてみると、これはもうたためん(たためない)たたみではどうしようもない。砂漠相環境で絨毯文化が発達したのは当然だったんだなァ、とまた感動。しごく当たり前のことだが実見すると、あらためて驚かされることが、多いものである。
 日の出の素晴らしい光彩のドラマを見終わって、登ってきた斜面に差しかかるとベルベルのおじさん、絨毯を広げて「これに坐れ」という。云われるままに坐ったら、おじさんは絨毯の坂下側の縁(へり)を掴んで走り降りはじめた。絨毯は私を載せたまま斜面を辷(すべ)り降りる。初雪の如き砂の上の橇(そり)である。とたんに私はアラビアンナイトの空飛ぶ絨毯の話を想い出した。砂嵐が起こればたためるたたみは空に舞い上がることもあっただろう。空飛ぶたたみはまんざら空想の産物ではなかったのかァ。
 森林の国、西欧の魔女は落葉を払う箒に跨(またが)って飛ぶ、烟煙の国中国では孫悟空が雲に乗って飛ぶ。砂漠相のアラブでは絨毯で飛ぶ。日本昔話では、たためん畳では恰好がつかないので、鶴か鴨の背に乗せてもらっている。


道具学会
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by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:38 | 住宅道具・考 
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