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住宅道具・考⑨
世界一周畳の旅 その6 
座敷箒の難儀 畳文化の誤訳PART2

山口 昌伴

◆畳の持ち味
 親戚の一家の引越しを手伝いに行った。公団住宅風鉄筋アパート3LDKである。行ってみると畳の部屋、8帖と6帖には早々とカーペットが敷きつめてあった。家具を入れたらカーペットが敷けなくなるモン、と手早く手配したという。敷きつめ畳の部屋にカーペットを敷きつめ、その上に箪笥や鏡台―はいまや通り相場である。
 大掃除のとき、畳を上げて表に出して、陽に干してパンパンパパンはもうやらないのだ。第一、上に載ってる家具が動かせない。第二に化学畳だから叩いたら壊れるだけだ。なぜ藺草表の青畳を味わうことをしないのか。だって色はあせるし、傷(いた)むし、汚れても表替(おもてが)えなんてできないでしょ。畳は上げることもなく、敷きっぱなし。表(おもて)も替えない。それよりカーペットの下だから畳部屋でも畳は見えない。―嗚(あゝ)、畳って何なんだ。ちょっと弾力性のあるクッション入りの合板フローリングユニットにすぎないのか。
 畳の持ちち味は畳床(たたみどこ)のクッション性と、畳表の足ざわり、肌ざわりにある。藁床(わらどこ)は重いほど上等とされた(もう過去形で書く)。より沢山の藁を使ってよりきつく締めあげる。堅くて、しかもクッションになっている。これが精神安定(トランチライザー)効果を持つ。
 畳表の足ざわり―足の裏は掌(てのひら)に近い高度な感覚をもっている。素足の感度は鋭いから、掃除を怠ると一目瞭然(いちもくりょうぜん)―はヘンだが、一足瞭然、部屋にちょっと踏み込んだだけで判る。埃がついていたらすぐ判って、しばらく歩きまわると気分がくさくさしてくる。風の吹いた日は、足ざわりがザラついて、しばらく居ると精神が散漫になる。あるいは気分が荒れてくる。

◆カーペット普及以前に普及した掃除機の不思議
 畳の掃除は、まず茶殻を散いて、座敷箒を畳目の方向に、目に入った埃をほじり出すように使い、茶殻に埃をからめて集める。次いで雑巾をかけ、さらに空(から)拭きする。そうしてはじめて歩いて気持ちよく、寝そべって快い、藺草の感覚が味わえる。畳の上を電気真空掃除機で撫でまわしたり、埃を吸わせただけでは到底駄目である。
 いまどき、そんな伝統的掃除法を繰り出しても無駄ではある。なんせ引越しの手伝いに行ったときはもう畳がカーペットの下、なのだから。
 ところで、欧米で発達した真空掃除機は土足で歩きまわるカーペットの掃除のために開発され進化してきた(と前回書いた)。その真空掃除機が戦後の日本に本格普及をはじめたのは、畳の上にまで敷き込むカーペットの普及より10年ほど早い。
 畳の掃除には先述の「掃除の仕方」からすると、座敷箒を振り廻した方がサッと済む。真空掃除機をいくら這(は)いずりまわらせても、埒(らち)があかない、というのが私の実感である。畳の和室を真空掃除機で―とは、これ異文化の誤訳であった。ならば何故、日本ではカーペットの普及よりカーペット用に開発された真空掃除機の普及が先行したのか。
 欧米では異文化の誤訳を解決する苦肉の策、苦肉道具として開発された真空掃除機が、日本に輸入され、国産化の始まった家庭電化ブームの時代は、「電化は文化」の時代だった。
 日本人にとって、電化製品は進んだ文明の結晶だった。電化生活は文化生活と同義だった。畳がまだカーペットで覆われないうちに、真空掃除機が座敷箒を駆逐しはじめた。座敷箒産業にはおおいなる難儀が降りかかってきたのであった。当時の物価では、真空掃除機の値段は座敷箒のほぼ100倍だった。異文化の誤訳は、ずいぶん高くついたのであった。


道具学会 
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by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:35 | 住宅道具・考 
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