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住宅道具・考⑧
世界一周畳の旅 その5 
西欧の絨緞 大いなる異文化の誤訳PART1

山口 昌伴

◆たたみが壁掛けの工芸品に?
 花の都パリはセーヌ南方ゴブラン通り。その名は15世紀以来の水車を用いたゴブラン織り―ゴブラン家の壁掛用緞通の産業地だった。いまは博物館になっていて、ごく一部で技術保存と後継者育成のため、わずかに操業している。
 ゴブラン織りが壁掛けタペストリー=刺繍なども加えた装飾緞通として知られるように、西欧では装飾緞通は歴史画や風景画など、絵画のように壁に掛けて鑑賞する工芸織物である。
 え! 緞通、絨緞は中近東一帯の床の敷物でしょ!! そう、私のいう「畳めるたたみ」の最たる床面の敷物であり、坐臥具といってもよい。
 それがどうして西欧では壁掛けの工芸織物に?―答えは簡単。西欧では、椅子・テーブルを用いる立働(りつどう)式起居様式。一方東方、オリエントは床坐式起居様式で眼差(まなざし)が床面に近いので、いきおい床の敷物が美しいものに成熟していった(前回参照)。その華麗なカーペットを西欧は、オリエントへの憧れからおおいに輸入したのだが、なんせ立働式起居様式だから、カーペットの上を立って歩き、椅子に腰掛けても眼差しが遠くてよく味わえない。それに椅子・テーブルの脚が邪魔して、折角高価な美術工芸品の全体が鑑賞できない。
 そこで、その真価をよく鑑賞できるよう(お宝自慢の必要から)に壁に掛けた。そこで床材パターンの美が絵画美に変わっていく。そこに目をつけたゴブラン家のせいもあって、中近東の床材が西欧では壁画に変したのである。ま、ここまではまあそれも「よし」としておこう。

◆「主婦の奴隷的家事労働」反対運動から生まれた道具 
 一方でカーペットは中近東と同様、床の敷物としても用いられた。部屋に敷きつめるのが豪奢のシンボルともなり、王俟貴族の歩む先へとカーペットのロールを伸ばしていくなぞは権威の象徴であった。
 カーペット―緞通、絨緞、毛氈、茣蓙、莚、要するに畳めるたたみ、巻ける畳みは床坐の起居での足の楽しみ、身体の楽しみ、眼近(まぢか)にあって目の楽しみの床材である。その上を土足のまま立って歩く生活での敷物にしたのは大きな間違いであり、いわば床材の移入における「異文化の誤解」、というより「異文化の誤訳」であった。
 日本で、畳の上を土足で歩いたら、もう犯罪か認知障害者である。それを西欧ではやってのけたのだから非道(ひど)い。しかし王俟貴族はその尻拭(ぬぐ)い、泥ぬぐいを奴隷か奴隷的使用人に掃除させることで解決した。
 しかし世は変転して、中流の家にもカーペットが普及するのと、人間の奴隷的使役の困難が並行して起こってくる。そこで主婦がカーペットクリーニングの奴隷的労働を代替させられるのだが、「主婦の奴隷的家事労働」反対運動が起きる。真空掃除機の工夫が始まる。床材―敷物文化の誤訳の、便宜的解決法の「結晶」がこんにちの、電気掃除機という一大家電製品ジャンルの元を生み出した根源なのであった。


道具学会 
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by ju-takukoubou | 2009-04-09 15:33 | 住宅道具・考 
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