地域マスター工務店登録運動 Webコラム

カテゴリ
全体
住まいづくりをチェック
いい工務店との家づくり 
業界コトバの散歩 
工務店ブログ探訪
住宅道具・考 
辣腕記者のヒント
野池主義でいく 
工務店業界サーチ
住まいを歩く 
工務店設計者の日々
NARB of JAPAN 
住宅ローン審査の仕組み
リンク
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
NARB of JAPANの実現へ向けて⑦
技術アイデンティティの滅失
小池 一三 ■ Ichizo Koike

お断り
 『小池一三の週一回』に乗せたブログの文章です
 以下は、私のブログ『小池一三の週一回』に乗せた文章ですが、皆さんにも読んでもらいたくて転載します。さぼって転載するわけではありません。最近の工務店の技術に対する視点の問題を書きました。


技術の本領
 ムク材に適正な接合金物として知られるロケット工法の本を作りました。
 『木工法に夢をみた―ロケット工法ものがたり』というタイトルをつけました。140pの本で、『住まいを予防医学する本』に続いて、今年2冊目の本です。
 この本の前半は、この工法の発明者である齋藤陸郎さんの半生を綴りました。この技術のアイデンティティは、何より発明者その人にあると考えたからです。
 いつものことですが、本を作りながら、いろいろなことを勉強しました。
 平嶋義彦名古屋大学名誉教授に教えられて、木造住宅の起源に興味を持ち、奈良橿原考古学博物館を訪ね、佐見田宝塚古墳から発掘された家屋文鏡を見に行ったり、富山・桜町遺跡について調べたりもしました。世界遺産にもなっているロシアキジ島の奇跡の建築とされる教会の写真を富井義夫氏からお借りすることができました。
 また、本居宣長の『玉勝間』を読み込み、出雲大社の歴史を調べる過程で、大林組がバーチャルプロジェクトとして取り組み、張仁誠氏が復元した絵も提供いただけることになりました。 唐招提寺の校倉造にカメラを据え、光と影の微妙を求めて、日長一日シャッターを押し続けたりもしました。お借りしたもの以外、今回の本の大半はぼくが撮りました。
 調べ、勉強しながら、外来技術である柱・梁構造とは別に、わが国古来の技術として柱・厚板構造の歴史があることを知りました。また、貫工法が法隆寺の建築を遡ること3000~4000年も前に存在することも知りました。さらにはまた、筋交工法が明治以降の外来技術であったことも……。

技術評価エネルギーから本が生まれた
 ロケット工法の真髄は、フレーム接合における金物と伝統工法の融合にもありますが、ぼくは何といっても、「さくりはめ」によるテラパネルに、この技術の卓越をみました。構造面材との二重の壁は、これ以上ない強さを持っていて、地震列島の上に建つ住宅技術の一大成果だとみました。それで、ぼくはこれを「Wウォール」と名づけました。
 テラパネルは、柱に溝をつけて板材を「さくりはめ」するわけですが、平嶋先生は、これは地震に対して減衰効果を持つ壁だといわれました。倒壊を抑止する「倒壊抑止壁」ですね、と申し上げたら「そうだ」とおっしゃいました。
 構造用面材は、実験で強烈な地震の振動を与え続けると、やがて釘が飛んで滑落します。剛性は、それ以上の剛性を与えられると脆いのです。伝統工法と同じような減衰効果を持つテラパネルは、「柔の技術」なので、地震波を柔らかく受け止め、そのことによって構造用面材の釘が飛び、滑落に至ることを抑止してくれます。補完作用が働くのです。
 わたしは技術者ではありませんが、始めにOMソーラーに接したときの感動が蘇りました。おもしろい、と思いました。この技術を埋もれさせるのは、もったいない、と思いました。技術本体によって与えられたエネルギーが、短期間でこの本をまとめさせたのだと思いました。

最近のFCやVCの低迷要因
 この本のご縁があって、静岡の片山建設さんからパンフレットの作成に依頼がありました。それで先日、社長さんとご子息の専務さんにお会いして、あれこれお話しました。
 片山建設さんはロケット工法の片山建設として、この工法の草分け的存在のお一人です。しかし、ロケット金物を用いられてはいますが、コストの関係から、テラパネルはお客の要望がなければ、あえて奨められておられませんでした。
 工務店は、過当競争を強いられておりコストに敏感です。僕がやってきたソーラーも、顧客を寄せる広告塔としては今尚強さを持っていますが、予算を詰めていく過程で除けられるケースが増えているようです。
 工法やシステムを、そういう使い方をするケースが、最近の工務店に見られ、フランチャイズなりグループに支払っている会費は、一種の広告費になってしまっているようです。これでは肝心の技術が泣きます。技術のアイデンティティを滅失させるもので、長い目で見ると信用を損なうことです。
 最近のフランチャイズ及びボランタリーチェーンの低迷は、単体技術を標榜するだけでは営業が厳しくなっていることを示していて、ネットを組み合って「いいとこ取り」を進めるネット型の方向が求められているというのが、僕の見解ですが、同時にそのフランチャイズ及びボランタリーチェーン自身の、技術コンセプトの摩滅と、それに取り組む人たちの熱意の低下が大きいと見ています。歴史を持ち、強い技術と見られたところも、等しくこの弱さを抱えているようです。

人を得て生きる技術
 ロケット工法を進める片山建設の片山社長は、根っからの技術者で、篤実な人柄が出ていて、ロケット工法を語らせると熱っぽく、この人に仕事を頼めば間違いない、という印象を濃くしました。町の工務店は社長の人格や人柄、もっといえば骨柄骨品で仕事を得ていると言っていいほどに、社長自体が問われます。
 僕は片山社長に、「この土地は東海地震が予想される地域であり、身体に感じない地震を含めると、毎日のように大地が揺れている土地ですよね。この土地で家を建てるとはどういうことか。それを押し詰めて考え抜いた結果、選ばれた技術がロケット工法だったのではないですか」と申し上げました。片山社長は大きく頷いて「その通りです」とおっしゃいました。
 それなら、ロケット工法の片山建設ではなく、「技術者である自分が選んだロケット工法だというパンフレットを作りましょう」と申し上げました。そして、もっともっとロケット工法を愛し、さらに進化した技術を取り入れ、もしそれがコスト高になったとしてもやりくり算段をつけ、熱意をもってユーザーの説得にあたりましょうよ、と申し上げました。

 片山社長は「それって初心だよな」と言われました。
 技術の本領は、人を得て生きるのだと思いました。

(有)小池創作所 
小池一三の週一回 
[PR]
by ju-takukoubou | 2009-04-09 14:16 | NARB of JAPAN 
<< NARB of JAPANの実... NARB of JAPANの実... >>