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NARB of JAPANの実現へ向けて①
日本のNARBは実現可能か?
小池 一三 ■ Ichizo Koike

真似できなかったNAHB
 マスター工務店の準備会合の折、日本でもNAHB(National Association of Home Builders/アメリカ住宅建築業者協会)のようなものを開きたいね、という話が出た。藤澤さんがいた。青木さんがいた。野辺さんがいた。みんな頷き合っていて、そうだそうだ、ということになった。「日本にもNAHBを」というのは業界人間にとっては、誰しも「そんなことがやれればいいね」と思うことで、こんな会話は、このときに限らない「挨拶言葉」ではあったけど。
 しかし、どういうわけかそれからというもの、ぼくはどうしたら日本のNAHBを開けるのか、そのことをずっと考え続け、奔り回ってきた。あるときなど「小池さんは何であんなに熱が入っているの」と、藤澤さんが訝られているという話を耳にしたりもした。思い込んだら走り出す弊は、雀百までなのかも知れない。
 しかし、壁は厚く開催の見通しは暗い、というのが現実である。
 NAHBは、全米の地域ビルダーの集まりである。建築関連の業者、設計事務所、市民も参加し、建材見本市は1,600のブースが並び、参加者は期間中20万人を数え、もう今年で62回目を迎える。NAHBに人が寄るのは見本市だけにあるのではない。期間中、専門家・一般市民を対象にした勉強会・建物見学会等が無数に開かれるところに、そのおもしろさがある。
 日本の参加者は、ここ数年減っているようだ。環境重視の志向が強まり、エネルギー多消費型のアメリカ住宅に関心がなくなったからであろう。知り合いに聞いても、最近はヨーロッパの建材市の方が見るべきものがあるという。流れと言うべきだろう。
 けれどそれは、日本人の足が遠のいたというだけのことであって、全米の地域ビルダーにとって必要であり、みな集まって議論し、勉強会を開くことの意味は何ら変わっていない。
 何でもアメリカの真似をしたがる日本であるが、NAHBだけは真似できなかった。その理由は何なのかを考えてみた。
 やはり、彼我の違い、ということを感じる。

彼我の工務店の違い
 日本とアメリカでは工務店の置かれた事情が異なるのである。アメリカの地域ビルダーは、建売住宅が中心である。現在、NAHBに組織されているメンバーは185,000社を数えるが、このうち3分の1(61,000社)が地域ビルダーで、彼らによって、およそ25万戸の建売住宅が建てられている。
 アメリカには、日本のハウスメーカーのような存在はない (これは日本にだけ起こり得た特異な企業形態)。また「注文」住宅を主体とする日本の地場工務店とも大きく異なる。
 アメリカの地域ビルダーは、デベロッパーが開発した数百区画の土地を5~30区画買い求め、土地代は2年後払いのようなやり方で建売住宅をつくるのが基本形態である。ビルダーは建築段階で金融から借り入れを受けられ、購入者が決まると、そのまま個人の住宅ローンへと移行する。
 この方式では、販売までの資金手当てが得られているが、売れ残りが生じると大変である。同一団地内においての競争は厳しく、ビルダーはそれぞれ特長を出さなければならない。アメリカの地域ビルダーは、そのための良きノウハウを求めるため、毎年NAHBへと出掛けるのである。理由はハッキリしている。
 NAHBに行くと、地域ビルダーの経営者とおぼしき人をたくさん見掛ける。夫婦でNAHBに来て、新製品の品定めをしている人もいる。毎年、ここで顔を合わせるのか、抱き合って再会を喜び合っている人もたくさん見掛ける。NAHBは、彼らの「知恵と工夫」を生む源泉となっていることが、会場にいるとよくわかる。
 これに対し、日本の地場工務店は地縁血縁、芋づる式の「縁コミュニケーション」によって受注を得るため、こうした競争よりも、地場での信用や繋がりを第一と考える。内側を向いて仕事しているのであり、外延性に欠けている。つまり、日本の地場工務店はNAHBのような存在を必要としないでも「やってこれた」のだ。
 こうした日本の地場工務店の閉鎖性が、ハウスメーカーの伸張を許し、今尚、多数のシェアを占めながら、市場潮流の中心になれない原因となっているのではないか。そしてそのことが、現下の危機的状況を生んでもいるように思われてならない。

日本版NAHBの必要性の高まり
 悪質リフォーム問題と「耐震疑惑」問題は、業界全体の信用失墜であり、この信用挽回と、地場で住宅を建てることの理由を、地域工務店はどのように示し切れるのか。
 そのためには、地場工務店の価値・地場工務店の役割・時代が求める環境性能・町づくりの視点を持った家(家並み)などについて、地場工務店はしっかり勉強し、それを方法論(具体的なノウハウ)として身につけなければならない。
 殊に林野庁が進める「新生産システム」は深刻な問題性を孕んでおり、ぼくはそのことをアップしたばかりのホームページのブログ上に書いた(興味のある人は、http://www.sosakujo.jp/blog/login.php)。
 つまり、日本においてもNAHBを必要とする情勢が醸成されているのである。
 これまで日本にもホームショーがあったし、今もあるけれど、メーカー主導のものが多く、工務店にとっては魅力に欠けていた。ぼくは、今回林産県で開催することと、地場工務店が主体となって開催することを、林産県に説いて回っている。岩手では増田知事に会い、兵庫、和歌山に行き、熊本に行き、それぞれしかるべき人に会い、東京都にも顔を出し、住宅政策部長に「東京都は森の都でもある。世界の大都市で36%の森林率を持つ都が他にあるだろうか」という書類を提出した。
 林産県は、森林税・水源税などの新税導入が進んでいるが、県民の理解を得ることに悩みを抱えているように見受けられる。税の使われ方の問題があって、山(森)と町の連環性を具体的に示すことが難しく、活きた関係・活きた存在として、地域に定着しきれていないように思われ、林産県は、そのためにもこのイベントを開くべきである。
 日本は資源のない国と言われるが、世界有数の森林国であり、殊に森林県はその恩恵に浴することができる条件を持っている。
 地域工務店は、個々を取り出すと零細であり、「ないない尽くし」の存在であるが、地域に生き、根づくことでしか存在し得ないことをプラス価値とし、「らしさ」を取り戻すことで再生し、活き活きとした「連」を構成するなら、相当量の潜在力を有しているものと考えられる。

動物的な存在と植物的存在
 ハウスメーカーは、いうなら動物的存在であり、マーケットが集中する都市部では大きな役割を持っているが、受注が見込めない中間山地に進出することはなく、受注が取れない場合は、その地域から撤退してしまう。これに対して、地場工務店は植物的存在であり、その土地に根づかない限り生命を得られない。
 林産県と地場工務店との組み合わせは、1つのアイデアであり、森林県にとっても、地場工務店にとっても、行政にとっても魅力的なことである。
 江戸時代末期のお伊勢参りのように、地場工務店のオヤジやカミさん達が、こぞってこの催しに集まり「勉強するエネルギー」を爆発させるインパクトは、なかなか初々しくて新鮮ではないか。工務店は、こうしたイベントがあるとないとに関わらず、年1回、研修旅行を実施しているところが少なくない。小さな工務店なのに、下職の人を含め、大型バス2台を使う例もあったりする。彼らをイベント会場に閉じ込めておくのはムリだとしても、5日間のイベントのいずれかの時間に、大工さんは大工さんの、左官屋さんは左官屋さんの(職人の日を設定)勉強会に参加してもらうことは可能である。社員が5人の工務店であれば、耐震やシックハウスの勉強会など、幾つかのコースに振り分け、戻って報告し合うことも可能である。
 とまぁ、そんなことを口角泡を飛ばしながら、奔り回っているのです。
 ぼくもOMソーラー協会の理事長を辞めたことだし、もう一暴れしようと思ってはいます。

(有)小池創作所 
小池一三の週一回 
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by ju-takukoubou | 2009-04-09 13:55 | NARB of JAPAN 
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