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逃げ
業界コトバの散歩⑬
逃げ 
岩下 繁昭

2002年、2年目のものつくり大学で2年生に、クラインガルテンのラウベ(ドイツの市民農園の休息小屋)の設計、施工実習を毎週1日半、半年かけて行った。基礎工事から屋根葺きの板金工事、建具づくりまで、小屋づくりのすべてを15人のチームで行うというもの。学生にとって結構大変なものであったが、むしろ設計から施工まで総合的に教えたことがない教員の負担の方が大きかった。
 そのため、この実習は、多くの教員の反対に合い、3年目からはできなくなってしまった。この実習の中で、学生たちにその必要性を訴えても理解されず、実習を通して最後に学生が理解してくれたものに「逃げ(にげ)」という言葉である。

逃げは積極的な余裕
 学生たちは、「逃げ」とはまさに何かから逃げることで、むしろ逃げないでぴったりと正確につくる方が、技能技術的に高度なものであると考えた。僕が「逃げ」を取らなければと言っても、普段の僕の生活態度を見ている学生は、まあ適当にやれとしか理解してくれない。
 「逃げ」はむしろ積極的で計画的なものである。まず施工の各段階で取り付けられる部材には「製作誤差」があるし、それ以前に取り付けられた部材の「施工誤差」もある。そこに自らの「施工誤差」が加えられるので、これら3つの誤差を吸収してくれる余裕が必要で、それが「逃げ」と呼ばれるものである。

竣工後の変形に対する「逃げ」
 材木の樹皮に近い側を木表(きおもて)、その反対側を木裏(きうら)と呼んでいる。木表は光沢がよく、きれいに仕上がり逆目が立たず、ざらざらになりにくい。このため造作材の見える側、人が触る側は木表にするのが一般的である。
 一方、木は、その性質上木表側に反り、幅、長さとも木表側が凹面になる。そのためベランダなど外部に張る場合、木表を見える側にすると、凹面になり雨水が切れにくく、腐りやすくなることから、木裏を見える側にするのが一般的で、これも変形に対する逃げである。

逃げがない平面計画
 「逃げ」はさらに、平面計画でも使われる。実は学生に「逃げ」の必要性を論じた僕であるが、皇太子のご成婚の年に建てた僕の東京の家は、敷地27坪に地下1階地上3階建てということもあり、まったく「逃げ」がない家になっている。
 そのため今困っているのが、冷蔵庫と洗濯機の設置スペースである。いまや洗濯機はドラム式が一般的で、15年前の洗濯機に比べ奥行きが増している。洗面脱衣室に洗濯スペースがあるのだが、問題は洗面脱衣室の出入り口の引き戸の有効開口が58cmしかない。この幅ではドラム式の洗濯機が入らないのだ。
 また冷蔵庫スペースであるが、これもぴったし60cmで新築当初に冷蔵庫を入れるのに、冷蔵庫の脇の壁の前面にあるスイッッチ・プレートに当たり、これを一時的に外して入れる始末であった。
 当時、技術の進歩で設備機器は必ずコンパクトになると考えていたが、予想に反してその後登場したものは、大きくなってしまった。
 「逃げ」は一見、隙間であり無駄な空間でもある。しかし適当な「逃げ」をとっておかなければ、将来かならず後悔することになる。「逃げ」の重要性を今改めて実感しているところである。
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by ju-takukoubou | 2009-04-08 14:58 | 業界コトバの散歩 
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