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地域マスター工務店登録運動 Webコラム

工務店とビルダーの違い
業界コトバの散歩②
工務店とビルダーの違い
岩下 繁昭


工務店名称の普及は戦後
 工務店とビルダーの違いを解説するのは極めて難しい。というのも工務店を英語に訳す時は、ビルダーという言葉を使わざるをえないからである。しかし家をつくろうとする人は、工務店に頼んだとは言うが、ビルダーに頼んだと言う人はまずいない。ビルダーという言葉は、業界用語であって一般用語ではないと言える。
 また工務店という言葉も曖昧で、一般には小規模建築業者であるが、大手ゼネコンも工務店という名前がついているので紛らわしい。木造住宅建築業者に工務店という名前が付けられたのは戦後のことであり、法人化した方が税法上優遇されることから、1950年代終わりに一斉に法人化され、その多くが○○工務店という会社名にしたからである。
 工務店もビルダーも一般用語としては、建築業者で両者に違いはない。そこで業界ではどのような建築業者を工務店と呼び、またどのような建築業者をビルダーと呼んでいるか、属性の違いを解説することにする。

(1)工法の違い
 在来軸組木造住宅を主としているのが工務店で、ツーバイフォーや軸組+パネル工法など新工法を主としているのがビルダーである。もともとビルダーという言葉が使われるようになったのは、1970年代にツーバイフォー工法がオープン化され、それを担う建築業者を工務店ではなく、ビルダーと呼んだところから始まる。

(2)出自の違い
 多くの工務店の出身は大工や木造住宅建築業であるが、ビルダーは不動産業や建設業、他産業から参入したところが多い。もっとも工務店も二代目、三代目になると大学の建築学科卒が多くなり、設計が好きで得意とするので、独自のスタイルを持った住宅をつくっているところも少なくない。

(3)規模の違い
 概ね30棟以下が工務店で、300棟以上となるとビルダーと呼ばれる。各県に300棟以上のビルダーが数社存在し、1,000棟以上となると数県以上をその市場としなければ規模の維持は難しい。また100棟程度の建築業者は、住宅専業では経営が難しくビルダーと呼ばれない所が多い。

(4)経営志向の違い
 売上高を拡大し、利益をより多くしようとするのがビルダーである。これに対して工務店は、タイ国王による農村の自給自足プロジェクトである「吾唯足るを知れ」と同様に、知足経済学に基づいて無理な拡大は望まない。

(5)営業手法の違い
 地縁や顧客の紹介や社長のトップセールスに頼るのが工務店、営業スタッフを雇い、モデルハウスなどで顧客を開拓するのがビルダーである。

(6)広告・宣伝手法の違い
 電柱広告程度が工務店、ビルダーとなると道路に大きな看板を出したり、ラジオCM、テレビCMを出したりもする。

(7)地域への根の下ろし方の違い
 地域に密着して深く根を下ろしているのが工務店。需要が期待できる場所ならば、迷わず進出や移動してゆく、ビルダーは市場という湖の浮き草のような存在なのである。

(8)分譲住宅を行うかどうかの違い
 注文住宅だけでなく分譲住宅にまで手を出すのがビルダーで、とくに団塊ジュニア世代をターゲットにしたローコスト分譲専門の建築業者をパワービルダーと呼んでいる。これに対して工務店は、土地の仕入れといったリスクを伴う分譲には手を出さない。

(9)作品か商品かの違い
 多くの工務店にとって住宅は一品生産の作品であり、ビルダーにとって住宅は、量産を前提にした商品である。
by ju-takukoubou | 2009-04-08 14:23 | 業界コトバの散歩 
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